ワタナベマキの
心と体に届く 神さま料理
心と体に届く 神さま料理
焼ききのこの白あえ
暑さもいつの間にか影を潜め、いよいよ食欲の秋の到来です。『心と体に届く 神さま料理』の第七回は秋の味覚の代表格・きのこを使った料理を紹介します。
日本は、きのこを含む菌類の繁殖に向いた温暖湿潤気候の国。秋の山には個性的なきのこが勢ぞろいし、今も昔もきのこ狩りが盛んです。古くは『日本書紀』や『万葉集』にきのこについての記述がみられるほどに日本人ときのこの付き合いは長くて深く、愛着もひとしお。きのこの繁殖に適した秋や春だけでなく、一年中食するために菌床栽培が広く行われるようになりました。しいたけに始まり、しめじ、えのきだけ、舞茸、なめこ、エリンギなど今や通年さまざまなきのこが出回っているのですが、それでもやっぱり秋になるときのこが食べたくなります。「きのこは秋」と日本人のDNAに刷り込まれているのかもしれませんね。
さて。わが家でおなじみのきのこ料理といえば、筆頭は炊き込みご飯。軽やかな衣をまとわせてカラリと揚げるフリットも好きで、よく作ります。また、きのこは香りだけでなく、強いうまみもあるので、パスタに使ったり、煮込んで作るラグーソースに入れたりしています。今回の「白あえ」もきのこの香りやうまみを存分に楽しめるあえものです。舞茸としいたけを使いましたが、エリンギやひらたけでも。食感や風味が異なるきのこを2種類くらい合わせるのがおすすめです。そして、白あえは食材をゆでてからあえることが多いのですが、きのこの場合はゆでずに焼き網で焼いています。こうすると、仕上がりが水っぽくならないうえに、きのこの香りが抜けず、焼いた香ばしさも加わってグンとおいしくなるんです。それと、焼く際は、酒を軽くふってから焼いてみてください。焼き色がきれいにつきやすく、香ばしさがアップしますよ。
作り方
【材料】(2~3人分)
・舞茸 100g
・生しいたけ 2枚
あえ衣
・木綿豆腐 1丁(300g)
・白ごま 大さじ2
A
・しょうゆ
・砂糖 小さじ1/2
・塩 小さじ1/4
・酒 大さじ1
あえ衣を作る
❶ 木綿豆腐はペーパータオルで包み、豆腐の重さの倍の重石をのせて30分~1時間おく(水きり)。
❷ ごまをフライパンに入れ、弱火で煎る。香りがたったらすり鉢に入れ、すりつぶす。
❸ ❷に豆腐を加えてすり混ぜ、Aを加えてさらによく混ぜる。
きのこを焼く
❹ きのこは焼き網にのせ、酒をふって焼き色がつくまで強めの中火で焼く。食べやすくさく。
仕上げる
❺ ❹のきのこを❸に加えてあえる。
ここがポイント! ①
自分で煎り、すり鉢ですったごまは風味が段違い。ぜひ、試してみてください。はじめてすり鉢を購入するなら、直径18~20cmのものが使いやすくておすすめです。そのままあえて食卓に出せますし、私はラーメンや温麺を食べるときの麺鉢にも使っています。
ここがポイント! ②
きのこの焼き上がりの目安は、縁に焼き色がつくくらい。焼き網だと手早く香ばしく焼けますが、焼き網がない場合などは魚焼きグリルで同様に焼いてみてください。
きのことドライいちじくのマリネ
もう一品は、ワインのお供にぴったりなマリネ。4種類のきのこを使いましたが、全部そろえなくても食感や風味が異なるもの2~3種類を用意すれば大丈夫です。
このマリネの一番のポイントは、ドライいちじくを使うこと。加熱調理やつけている間に、いちじくの甘みがマリネ液にじんわりと出て、全体をおいしくまとめてくれるんです。そして、レモン汁と黒こしょうは火を止めてから加えるのもポイント。レモンの酸味とこしょうの香りが飛ばずに、マリネの味を引き締めてくれます。
いちじくの甘みときのこのうまみが出たマリネ液もおいしいので、薄くスライスしてカリッと焼いたハード系のパンを添えて、余さずにどうぞ。秋の夜長にワインが進みますよ。
【材料】(作りやすい分量)
・しめじ…100g
・えのきだけ…80g
・エリンギ…2本
・生しいたけ…2枚
・いちじく(乾) 80g
・にんにく(薄切り)…1かけ分
・赤とうがらし(種を除く)…1/2本
A
・白ワイン…80ml
・ローリエ…1枚
・塩…小さじ1
・レモン汁 大さじ1
・黒こしょう(粗びき) 少々
・オリーブ油…大さじ2
❶ しめじは堅い部分を切り落とし、ほぐす。えのきだけは堅い部分を切り落とし、長さを4等分に切る。エリンギは縦に2~4等分に切る。しいたけは堅い部分のみを切り落とし、縦に4等分に切る。いちじくは4等分に切る。
❷ フライパンににんにく、オリーブ油を入れて中火にかけ、香りがたったら、きのこ、いちじく、とうがらしを加えて炒める。
❸ 油が回ったら、Aを加え、ひと煮立ちしたら弱火にしてふたをする。約8分間煮たら火を止め、レモン汁、黒こしょうを加える。3時間くらいおくと、さらにおいしさが増す。
※冷めたら、清潔な保存容器に入れ、冷蔵庫で3日間保存できる。
ここがポイント!
きのことドライいちじくを一緒に炒め、蒸し煮すると、マリネ液にきのこのうまみといちじくの甘みが出て、味に奥行きが出ます。
編集/遠藤綾子 写真/名取和久