ワタナベマキの
心と体に届く 神さま料理
心と体に届く 神さま料理
七月
真夏のとうもろこし
とうもろこしご飯
厳しい暑さが続きますね。『心と体に届く 神さま料理』の第四回の主役は、とうもろこし。その魅力が存分に楽しめる「とうもろこしご飯」をご紹介します。
とうもろこしは、米や小麦と並ぶ世界三大穀物の一つ。原産地はアメリカ大陸で、紀元前7000年頃にはメキシコ付近で栽培が始まっていたといわれています。以来、長らくとうもろこしを栽培してきた原産地とその周辺のアメリカ大陸各地にはとうもろこしに関連する神話や伝説が多く伝わっていて、メキシコではとうもろこしの粒(実)には神さまが宿ると今でも信じられていると聞いたことがあります。私たちにとってのお米みたいな存在なのかもしれませんね。
最近は初夏から初秋にかけてたくさんの品種が出回っていますが、私が購入することが多いのは、粒皮が柔らかく、どんな料理にも合う「ゴールドラッシュ」や「味来」。皮付きのまま蒸していただくのも好きですし、サッと蒸してから冷たいポタージュにするのもいい。また、わが家の夏の楽しみの一つ、BBQにも欠かせません。
ちなみに、私は新鮮なとうもろこしが手に入ったときにひげをチヂミに入れたり、サッと揚げたりすることもあります。とうもろこしのもじゃもじゃのひげはめしべが伸びたもので、ひげの本数と粒の数は同じなのだそうです。ひげがふさふさとしたとうもろこしなら、粒もぎっしり詰まっているということですね。薬膳では、とうもろこしのひげを乾燥させたものを南蛮毛といい、煎じて飲むと利尿作用があるとされています。とうもろこしそのものも体の熱を冷ましたり、余分な水分の排出を助けたりするそうですよ。まさに夏にピッタリの野菜ですね。
さて、今回の「とうもろこしご飯」にはとうもろこしをたっぷりと炊き込みました。とうもろこしならではの甘みや粒のプチプチした食感が満喫できるごちそうご飯で、梅干しも一緒に炊いているので後味はすっきり。真夏のちょっとした集まりにもおすすめです。そんなときは蒸らした後、鍋ごと食卓へ。きっとふたをとった瞬間に歓声が上がります。
作り方
【材料】(3~4人分)
・とうもろこし 2本
・米 1と1/2合(270ml弱)
・昆布(5cm四方/表面を拭く) 1枚
・梅干し 2コ
・酒 大さじ1
・水 カップ1と1/2
下ごしらえをする
❶ 米を研いでざるに上げる。
❷とうもろこしは包丁で削るようにして芯から粒をはずす。芯は長さを半分に切る。
炊く
❸鍋に昆布、❶、❷の粒と芯、梅干し、酒、水を入れ、ふたをして強火にかける。
❹煮立ったら弱火にして12分間炊く。10秒間強火にして火を止め、10分間蒸らす。
仕上げる
❺とうもろこしの芯と昆布を除き、梅干しを崩しながらザックリと混ぜる。
ここがポイント!
このご飯のおいしさの鍵を握るのは、とうもろこしの芯。うまみがたっぷり蓄えられている芯を一緒に炊くと、うまみが増し、風味も豊かになります。梅干しはしょっぱくて酸っぱい、塩分13~14%のものを。梅干しの酸味と塩分が全体の味を引き締めてくれます。
とうもろこしのかき揚げ
もう一品もとてもシンプル。とうもろこしの粒だけを生地でまとめて揚げた、かき揚げです。粒が大きいとうもろこしを選んでつくってみてください。夏に揚げ物、というと少し敬遠しがちですが、具材が一種類だけだと気軽に揚げられます。
黄金色に揚げたアツアツをかじると、一粒一粒が弾けて、甘いとうもろこしスープがあふれるよう。揚げ色が濃い部分は、風味が増して香ばしく、食欲をそそります。今回は塩を添えましたが、もちろん天つゆでいただいても。カレー粉を少し加えて混ぜたカレー塩も相性抜群です。暑い日にスイートチリソースでちょっとエスニックに、というのもいいですね。
また、ちぎったバジルの葉を少し加えて揚げても。見た目も味わいも爽やかになります。
作り方
【材料】(作りやすい分量)
・とうもろこし 1本
・小麦粉 大さじ4
・塩 適量
・冷水 大さじ4
・揚げ油 適量
❶ とうもろこしは包丁で削るようにして粒をはずす。
❷ ボウルに小麦粉、塩1つまみを合わせ、冷水を加えて少し粉っぽさが残る程度までサックリと混ぜる。❶のとうもろこしを加える。
❸ 鍋に揚げ油を約3cm深さまで注いで中火にかける。180℃になったら、❷を大きめのスプーンですくい取ってボウルの端で軽く生地をきり、油に静かに入れる。
❹ 浮いてくるまで動かさずに揚げる。表面が堅くなって軽く色づいたら上下を返し、カラッとしたら取り出して油をきる。
❺ 器に盛り、塩適量を添える。
ここがポイント!
鍋の縁に沿わせるようにして油に入れるとまとまりやすく、きれいな形になります。ばらけてしまったとうもろこしの粒は、菜箸で手早くタネに寄せてまとめましょう。
編集/遠藤綾子 写真/名取和久