ご挨拶

由緒

　代沢稲荷は世田谷区代沢の閑静な住宅街に鎮座する江戸時代初期から四百年程続く神仏しんぶつ習合しゅうごうの小さな神社です。仏教（密教）の尊天そんてんであり、開運・強運の神様である吒枳尼眞天だきにしんてん像を鎮守ちんじゅとして祀まつっています。御祭神ごさいしんには神道の神様である宇迦之御魂神うかのみたまのかみを祀っており、共に歴史的に日本各地でお稲荷いなりさんとして親しまれてきた神様です。

　当社は江戸時代初期から昭和時代までは阿川家の屋敷神やしきがみ（邸内社ていないしゃ）でした。平成に入り、先代が公道からの参道を作り、どなたでもご参拝いただけるようになりました。

　令和に入り、神社の存続と多くの方にご参拝いただけるように、お社をリニューアルしました。ロゴ、看板、『Web代沢稲荷』のデザインは、アートディレクター・岡本一宣さんによるものです。

金運向上
新紙幣、渋沢栄一

　世田谷区教育委員会文化財係の調査によると、祠ほこらは大阪の住吉大社と同じ住吉造になっていることがわかりました。そのそばには関東大震災に耐えた屋敷の鬼瓦が置かれています。屋敷を訪れた客人がお社をお参りする際に口と手を清めていた如意宝珠にょいほうじゅ＊の絵柄が彫られている手水鉢ちょうずばちも現存しています。狛狐は令和四年に新たに建立したものです。宝蔵の扉を開く秘鍵と宝物の象徴である玉をくわえています。製作はおかざき匠の会の戸松政洋さんです。この狛狐は、北澤八幡宮にあります末社の高良玉垂社の狛狐がモデルです。北澤八幡宮の矢島宮司は父の御学友ということもあり、お社のリニューアルあたりいろいろとアドバイスをいただきました。

　屋敷を訪れていた客人の中には渋沢栄一、菊池寛、横光利一などの姿もありました。新貨幣にもなった渋沢栄一はたびたび屋敷を訪れ、経済や政治談議に花を咲かせていたと伝え聞いております。当社はこの新貨幣を記念とした渋沢栄一公の金運向上御朱印を頒布しております。

　菊池寛の紹介で屋敷を何度か訪れた新感覚派の作家・横光利一は昭和三年に北沢に犬養健に雨過山房うかさんぼうと名付けられた住まいを構えました。先代はこの雨過山房でのご子息たちとの思い出を語っていました。横光利一の小説『睡蓮すいれん』は、当社の最寄駅である池ノ上駅近くにかつてあった“池”を着想したものと言われています。Web代沢稲荷では、約百年前のこの“池”を舞台とした小説『夏の幻』を連載しています。

　百年先も人々の心を支え、願いを叶える神社であり続けたいと思います。