長所を発揮するように努力すれば、短所は自然に消滅する。
渋沢栄一
昔、少年野球をしていた頃に聞いた話です。
バッティングがとても得意な選手が、ある試合でバントを決められず、強く叱責されたことがあったそうです。
それ以来、その選手は「苦手を直すこと」ばかりを求められ、練習もバント中心になっていき、いつのまにか、持ち味だった打撃の良さはすっかり影をひそめてしまった。そんな話でした。
今思うのは、短所を責められ続けると、人は自分の長所まで見失ってしまうことがある、ということです。
だからこそ、この渋沢栄一の言葉が、今でも折に触れて胸に浮かびます。
誰にでも、得意なことと苦手なことがあります。
けれど、苦手をあれこれ数えるよりも、まずは長所を伸ばす。長所に力が宿れば、短所は「消える」というより、目立たなくなり、いつしか気にならなくなっていく。この言葉は、そう教えてくれているように思います。
渋沢栄一翁の歩みを振り返っても、翁は「完璧だったから」道を拓いたのではなく、誠実さ、行動力、人を生かす力――自分の長所を理解し、それを生かせる場へと進み続けた方だったのではないでしょうか。
代沢稲荷にも、「もっと自分の良さを発揮したい」「仕事の流れを整えたい」とお参りに来られる方がいらっしゃいます。
そんなときは、短所を直す祈りだけでなく、長所を生かす祈りを、そっと試してみてください。
自分の良さを信じ、それを世の中の役に立つ形で発揮しようとするとき、不思議と運やご縁は動き出します。
短所を責めるより、長所に光を当てることが、開運の入り口なのかもしれません。
ご参拝の折には、どうかご自身の「長所」を一つ思い浮かべてみてください。小さなことでかまいません。
「この長所を、今日はどんな場面で生かせるだろう?」
そう問いかけながら手を合わせると、心の向きが「短所探し」から「長所を生かす一歩」へ、少しずつ変わっていきます。
そして、代沢稲荷では、渋沢栄一翁にちなむ「金運向上御朱印」を頒布しております。阿川家は以前より翁とご縁があり、家に伝わる話として、親族の縁組に際し、翁がご縁をお取り持ちくださったと聞いております。
金運とは、ただ「お金が増える」ことだけではなく、働きが報われる流れ、信用が積み上がる流れ、良いご縁が巡る流れでもあります。
長所を生かし、誠実に積み重ねる――その歩みの先に、金運の整いもまた宿るのだと、翁の生き方は語っているように感じます。
【人物紹介】
渋沢栄一(しぶさわ えいいち/1840–1931)は、明治期以降の日本で株式会社制度や近代的経営を広めた実業家で、「日本資本主義の父」とも呼ばれます。大蔵省を辞したのち、第一国立銀行(のち第一銀行)を拠点に、銀行・鉄道・製紙など多分野の企業設立・育成に関わりました。経済活動と倫理の両立を目指す「道徳経済合一」を説き、福祉・教育など社会事業にも力を注ぎました。






