名店に捧ぐ、神様カレー
天井が高くガラス張りで、視界が広い店内に足を踏み入れ、空いている席に座る。注文をした料理を待つ間、ボーッと店内を眺めて過ごす。目に入るものひとつひとつがお洒落で目移りしてしまう。アンティークの家具や壁にかかったアーティストの作品、異国情緒漂う不思議な置物。何から何まで素敵だ。
福岡の『ヌワラエリヤ』を訪れるのは、いつもランチを過ぎた中途半端な時間と決めている。落ち着いた店内でゆったりと食事を楽しめるからだ。いつものスリランカカリーを待つ間、決まって同じ感情が訪れる。自分が美的センスなるもののひとかけらでも持ち合わせていたら、日常はより豊かだったかもしれないな、と。
オーナーの前田さんの本業は建築家。仕事で縁があったスリランカからシェフを連れてきて、店を始めたのが30年以上前。傍から見れば趣味の延長のような形で始めた店だが、今や九州のスリランカカリー文化を牽引する存在にまで成長した。さらりとしつつビシッと辛く刺激的な味わいを追随するカレー店が後を絶たないのだ。
長年にわたってスリランカ人シェフが調理場に立ち続けているのにスリランカにあるカリーとは味わいが違う。辛味の奥に独特のまろやかさがあって日本人の味覚に寄り添った作品に仕上がっている。尊敬の眼差しを向けてもご本人は飄々としたもので、「コックとのコミュニケーションやものや空間に対する思いを大事にするだけかな」と豪快に笑う。痛快な店である