吒枳尼眞天とは

ワタナベマキの
心と体に届く 神さま料理

料理・ワタナベマキ

鶏の照り焼き

あっという間に師走。今年の締めくくりの時期になりました。『心と体に届く 神さま料理』の第九回は鶏肉を使った料理を紹介します。
忘年会にクリスマス、そしてお正月の準備と、街には華やかな空気が漂っています。この時期、特にクリスマスが近くなると、スーパーマーケットの精肉コーナーや肉屋さんにはローストチキン用の丸鶏や骨付き鶏もも肉がずらり。アメリカではクリスマスといえば七面鳥のローストですが、日本では七面鳥より入手しやすい鶏肉のローストが定着したようです。鶏肉は肉質がやわらかいので消化吸収がよく、豚肉や牛肉に比べて脂肪が少ないのも特徴のひとつ。淡泊でさまざまな調味に合い、和食にもピタリとはまります。一年中出回っていますが、脂肪を蓄えるためか、寒さが増すとともにおいしさも増す気がします。また、部位ごとで肉質や味わいが違うので食べ飽きしないのもうれしいところ。わが家では、むね肉はせいろでゆっくり蒸して、しっとり仕上げる蒸し鶏が定番です。ささ身は塩麹をなじませて蒸したものが好き。10本くらいまとめてつくり、そのまま食べたり、サラダに添えたり、わさびと和えたり、といろいろに楽しみます。手羽は魚焼きグリルでパリッと焼いたり、スープをとったりするほか、みそ漬けにして焼いたり、煮たりして食べています。
ここで紹介する照り焼きには、もも肉を使いました。脂肪もあって、しっかりしたコクやうまみがある部位なので、塩をふってシンプルに焼くだけで十分おいしいのですが、ご飯がすすむ香ばしい甘辛味に。厚みのある部分はひと手間かけると、ムラなく火が通り、ふっくら柔らかく仕上がります。せわしない日や洋風の料理が続いた日の後、炊きたてのご飯と一緒に食べると、何やらほっこりする一品です。

 

作り方
【材料】(作りやすい分量)
・鶏もも肉* 1枚
・ねぎ 1/2本

・みりん 大さじ2
・しょうゆ 大さじ1
・塩 少々
・酒 大さじ1
・油(米油など) 少々
・すだち(横半分に切る) 1コ分
*常温に戻しておく。

❶ 鶏肉は余分な脂肪を除く。皮側を上にしてまな板に置き、フォークを数か所に刺す。上下を返し、縦横それぞれ3~4か所に切り込みを入れ、塩をふってなじませる。
❷ ねぎは6cm長さに切り、縦に半割りにする。Aは混ぜ合わせておく。
❸ フライパンに油を入れて中火にかけ、鶏肉を皮側を下にして入れ、フライ返しで押さえながら焼く。途中でねぎも加え、上下に焼き色がつくまで焼く。
❹ 鶏肉に焼き色がついたら上下を返し、酒を回し入れる。ふたをして弱めの中火にし、7分間蒸し焼きにする。
❺ Aを回し入れて中火にし、煮立ったら鶏肉全体にからめる。汁けがなくなり、とろみがついたら火からおろす。
❻ 食べやすく切って器に盛り、すだちを添える。

ここがポイント! ①


皮側からフォークを刺すことで、火が通りやすくなると同時に、味もよく入ります。さらに上下を返して切り込みを。これで味がしっかりからみ、筋が切れるので焼き縮みも少なくなります。

ここがポイント! ②


焼き始めは、フライ返しで押さえながら焼くと、肉がそらずにきれいな焼き上がりに。また、皮から出る脂でパリッと焼けます。

鶏そぼろ

もう一品は小さな常備菜、鶏そぼろです。そぼろといえば、お弁当や丼でもおなじみ。食材を調味料などと一緒によくいり上げてつくるもので、食材には鶏や豚、牛肉のほか、さばやあじなどの魚肉やえび、溶き卵などが使われます。そぼろという呼び名には、語源を“粗朧(そおぼろ)”とし、その意味するところは、魚介類の身を細かくほぐしたりすりつぶした“朧(おぼろ)”より粗いものだから、という説などがあるようです。
普通は水分がなくなるまでいるので、かなりパラパラした状態になるのですが、ここで紹介する鶏そぼろは、下ごしらえのひと手間のおかげでしっとりホロホロとして舌触りもよく、ご飯にもよくなじみます。もしかしたら、“鶏おぼろ”と呼んでもいいのかもしれません。ご飯にたっぷりとかけて、青菜のあえ物などの副菜を添えるだけで、立派な一食に。忙しい年末年始に頼りになりますよ。

作り方
【材料】(作りやすい分量)
・鶏ひき肉(もも) 500g
・しょうが(すりおろす) 2かけ分
・酒 大さじ3
・みりん 大さじ3
・しょうゆ 大さじ2
・塩 小さじ1/4
・ご飯(温かいもの) 適量
・白ごま 少々
・みつば(小口切り) 少々

❶ 鶏ひき肉はフードプロセッサーなどでさらに細かくする。
❷ フライパンに酒、みりんを入れて中火にかける。煮立ったら弱火にして鶏ひき肉を入れ、へらで細かくほぐす。
❸ 再度煮立ったらアクを除き、しょうが、しょうゆ、塩を加える。へらでよく動かしながら汁けがなくなるまで炒め煮にする。
❹ 器にご飯を盛って❸適量をかけ、白ごまをふり、みつばを散らす。
※清潔な保存容器に入れ、冷蔵庫で4~5日間保存できる。

ここがポイント!


すでにひいてあるひき肉ですが、ツブツブしたところがなくなり、ねっとりするくらいまでフードプロセッサーなどにかけます。こうすると、ポロポロではなく、しっとりホロホロしたそぼろに。

 

編集/遠藤綾子 写真/名取和久

 

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