ワタナベマキの
心と体に届く 神さま料理
心と体に届く 神さま料理
菜の花の昆布締め
まだ寒い日が続きますが、日差しに少し春を感じるようになってきました。『心と体に届く 神さま料理』の第十一回は一足早く春を食卓に届けてくれる、菜の花を使った料理を紹介します。
春野菜のイメージが強い菜の花。早いものでは年末から出回り始め、菜花とも呼ばれます。実は特定の1品種ではなく、コマツナやハクサイ、チンゲンサイなどアブラナ科全般の植物の花茎とつぼみ、脇芽を摘んだものの総称で、郊外の野菜販売所などでは、さまざまな菜花を見かけます。芽吹きの季節の植物にふさわしいパワーを蓄えていて、栄養価に優れ、ビタミンC、B1、B2などのビタミン類のほか、カルシウム、鉄分などのミネラル類を多く含むのも特徴。これから活発に活動を始めようという時季にたくさん食べたい野菜です。ちなみに、私が普段使っているのは八百屋さんなどでよく見かける、15cmほどの長さに切りそろえた花茎が束ねられたもの。つぼみが堅く締まり、葉や茎の色が鮮やかで、切り口がみずみずしいものを選んで購入し、つぼみが開いてくる前になるべく早く使うようにしています。
菜の花の魅力と言えば、花びらの黄色がのぞくつぼみの愛らしさ、緑のいきいきとした美しさ、そして、ほのかな辛みと苦み。おひたしやあえ物のほか、油との相性もよいので、炒め物にもおすすめです。ですが、私が一番気に入っているのは昆布締め。菜の花特有の風味、昆布の香りとうまみが相性抜群なんです。昆布締めというと、少しハードルが高いイメージがあるかもしれませんが、実は材料もつくり方もシンプルなので、ぜひ挑戦してみてください。菜の花の魅力が存分に楽しめる、とても春らしい味わいの一品。お酒にも合うので、お祝いごとの食卓にもピッタリです。
作り方
【材料】(作りやすい分量)
・菜の花 200g
・昆布(8~12cm角) 2枚
・塩 適量
❶ 菜の花は根元の堅い部分を切り落とす。鍋に湯を沸かして塩(目安は湯に対して1%の量)を加え、菜の花を1分30秒間ゆでて冷水にとる。冷めたら穂先をそろえてまとめて持ち、水けをしっかりと絞る。
❷ 昆布は水でサッとぬらし、1枚をバットに入れる。昆布の上に菜の花を並べて塩少々をふり、もう1枚の昆布ではさむ。ラップをかけ、バットに入れて冷蔵庫で1~2時間おく。
❸ 器の大きさに合わせて❷の昆布を切り、器に敷く。菜の花も器の大きさに合わせて長さを切り、昆布の上に盛る。
ここがポイント!
はさむ際は昆布に触れない菜の花がないように並べると、まんべんなく昆布のうまみが行き渡ります。昆布ではさんだまま冷蔵庫で1~2日間は保存できますが、時間が経つと昆布の味が強くなるので、半日くらいまでに食べきりましょう。
菜の花の白あえ
もう一品は、菜の花の白あえです。食材、特に野菜の食感や風味が生かせるので、旬の野菜を楽しみたいときはよくあえ物をつくります。ごまあえ、からしあえ、酢みそあえなどあえ衣によって、さまざまな味が楽しめるのも魅力。今回は、菜の花のほのかな辛みと苦みを豆腐ベースのクリーミーなあえ衣が優しく受け止めてくれる白あえにしました。
白あえのあえ衣にはごまを加えることもありますが、今回は菜の花をしっかりと生かすためにあえて使わず、シンプルに。豆腐も下ゆでした菜の花も水けをきちんときるのがポイントです。これはほかのあえ物でも同じで、余分な水けが残っていると味がぼやけてしまうんです。そして、できるだけあえたてをいただくのも大切なこと。時間をおくと食材から水けが出て食感が損なわれたり、味がぼやけてしまいます。仕上げには香り高い粉ざんしょうを少々。菜の花の白あえのアクセントとなり、優しい味をピリッと引き締めてくれますよ。
作り方
【材料】(つくりやすい分量)
・菜の花 200g
・木綿豆腐 200g
・塩 少々
・うす口しょうゆ 小さじ2
・砂糖 小さじ1/2
・粉ざんしょう 少々
❶ 豆腐はペーパータオルに包んでバットに入れる。上にもバットをのせて400gのおもしをし、1時間ほどおいて水きりをする。
❷ 菜の花は根元の堅い部分を切り落とす。鍋に湯を沸かして塩(目安は湯に対して1%の量)を加え、菜の花を2分間ほどゆでて冷水にとる。冷めたら穂先をそろえてまとめて持ち、水けをしっかりと絞って3等分の長さに切る。
❸ すり鉢に❶の豆腐、うす口しょうゆ、砂糖を入れてなめらかになるまでする(すり鉢がない場合は、ボウルに豆腐を手でくずしながら入れ、ゴムべらでざっとつぶしてから、調味料を加えて混ぜる)。菜の花を加えてサックリとあえる。器に盛り、粉ざんしょうをふる。
編集/遠藤綾子 写真/名取和久