ワタナベマキの
心と体に届く 神さま料理
心と体に届く 神さま料理
牡蠣ごはん
今年も秋は早足で行き過ぎ、いつの間にか、冬の気配が強くなりました。『心と体に届く 神さま料理』の第八回は秋から春先まで楽しめる、牡蠣を使った料理を紹介します。
貝といえば、春のイメージ。確かに、赤貝や蛤、浅利などは産卵期を迎える春が旬。ですが、同じ二枚貝でも牡蠣(マガキ)は春から夏の産卵期は食用に適さず、身がふっくらする晩秋からがおいしくなるといわれています。牡蠣は“海のミルク”と呼ばれるほど栄養が豊かで、必須アミノ酸、さまざまなミネラルやビタミン類を含むほか、エネルギーのもととなるグリコーゲンも豊富。寒さが増し、冬に向かって体力を蓄えたい時期にピッタリな食材です。ちなみに、大正生まれのあのロングセラーキャラメルは、子どもたちの健康をサポートするためにグリコーゲンたっぷりの牡蠣エキスを発売当初から使用しているそう。商品名もそこに由来していたんですね。
さて、秋からは洋食屋さんやお惣菜のお店では「かきフライ」が人気者に。メニューや店先の幟に「かきフライ」の五文字を目にするようになると、むずむずと食べたくなってきて、大粒の牡蠣が手に入れば、必ず牡蠣フライを作ります。にんにくととうがらしを効かせた白ワイン蒸しも好きですし、牡蠣ごはんもわが家で人気者です。牡蠣ごはんの牡蠣は、お米と一緒に炊き込まないのが最大のポイント。牡蠣はしょうがと一緒に軽く煮て取り出し、うまみが出た煮汁をだしにしてごはんを炊きます。火を止めた段階で牡蠣を戻して蒸らすと、牡蠣のまろやかで濃厚なコクとともに、身のなめらかな舌触りも存分に楽しめる、極上の牡蠣ごはんの出来上がりです。
作り方
【材料】(作りやすい分量)
・牡蠣(むき身/加熱用) 300g
・米 2合(360ml)
A
・だし カップ2(400ml)
・しょうが(せん切り) 1かけ分
・酒 大さじ2
・しょうゆ 大さじ1
・塩 小さじ1/2
・塩 適量
・柚子(ゆず)の皮(細くけずる、またはせん切り) 少々
❶ 米は研いでざるに上げる。
❷ 牡蠣は薄めの塩水(水カップ3に塩小さじ1の割合)の中でやさしく洗い、別のざるに上げる。2~3回水をかえて洗い、ざるに上げて水けをきる。さらにペーパータオルではさみ、よく水けを拭く。
❸ 鍋にAを入れ、中火にかける。煮立ったら❷の牡蠣を入れてひと煮立ちさせ、アクを除く。
❹ 牡蠣としょうがを網じゃくしですくってバットに移す。煮汁は冷ます。
❺ 鍋に❶の米を入れる。❹の煮汁に水を足して400mlにして加え、ふたをして強火にかける。煮立ったら弱火にして12分間炊き、30秒間強火にして火を止める。牡蠣としょうがを戻し入れて15分間蒸らす。
❻ 器に盛り、柚子の皮を散らす。
ここがポイント! ①
塩水と水をかえながら丁寧に洗うことで汚れが取れ、くさみも除くことができます。身がくずれないようにやさしく扱いましょう。
ここがポイント! ②
牡蠣は火を通しすぎるとパサついて口あたりが悪くなるので注意。ぷっくりしたら、煮汁から引き上げるタイミング。軽く火を通した牡蠣を仕上げに加えることで、ふっくらしたやわらかさが楽しめます。
牡蠣のオイル煮
日本のみならず、世界各地で食されている牡蠣。あまり魚介類を生食しない欧米でもなぜか牡蠣は広く生食されています。レストランやカフェなどはもちろん、海沿いの市場などでは生の牡蠣を開いて試食をすすめられることも。韓国では屋台でかきのオムレツを見かけました。二枚貝ながら身が厚くてボリュームがあり、生でよし、焼いてよし、揚げてよし、炒めてよし。土手鍋や寄せ鍋など冬にうれしい鍋ものにも欠かせない食材です。
そんな中からもう一品は、牡蠣をハーブやスパイスと一緒にオリーブ油で煮たオイル煮を紹介します。ミルキーで磯の香りあふれる牡蠣はスモーキーなウイスキーと相性抜群で、このオイル煮はウイスキーやウイスキーを炭酸水で割ったハイボールにピッタリ。日もちもするので、ちょっとした集まりの手土産にもおすすめです。
作り方
【材料】(作りやすい分量)
・牡蠣(むき身/加熱用) 12コ
A
・ローズマリー 2本
・ローリエ 1枚
・黒こしょう(粒) 小さじ1
・にんにく(包丁の腹でつぶす) 1かけ分
・塩 小さじ1/3
・白ワイン カップ1/2
・オリーブ油 カップ1/2
・塩 適量
❶ 牡蠣は薄めの塩水(水カップ3に塩小さじ1の割合)の中でやさしく洗い、ざるに上げる。2~3回水をかえて洗い、ざるに上げて水けをきる。さらにペーパータオルではさみ、よく水けを拭く
❷ 鍋に❶の牡蠣、Aを入れて中火にかける。
❸ 煮立ったら弱火にしてふたをし、約10分間煮る。火を止め、粗熱を取る。
※清潔な保存容器に入れ、冷蔵庫で4~5日間保存できる。
ここがポイント!
ローズマリーや黒こしょうなどハーブやスパイスを一緒にオイルで煮ると、牡蠣のくさみがやわらぐとともに、風味が豊かに。
編集/遠藤綾子 写真/名取和久