吒枳尼眞天とは

ワタナベマキの
心と体に届く 神さま料理

料理・ワタナベマキ

 

餅と九条ねぎのすき焼き

 新しい年の幕が上がり、少し落ち着かれたころでしょうか。『心と体に届く 神さま料理』の第十回はお餅を使った料理を紹介します。

 レシピでは「餅」と記すのですが、やっぱり「お」をつけて「お餅」とするのが落ち着きます。お餅が昔から、神様が宿る神聖なものとされてきたからでしょうか。餅というと、日本では一般に、もち米を粒のまま蒸して杵と臼でついたつき餅を指します。その歴史は古く、稲作とともに伝来し、遅くとも弥生時代にはつくられるようになったとされています。平安時代には主に貴族の間で、室町時代から江戸時代にかけて武士や庶民の間でも食すようになったそうです。今年のお正月も多くのご家庭で飾ったであろう鏡餅も平安時代にはすでに存在し、あの『源氏物語』にも登場しています(文中では、「餅鏡(もちいかがみ)」)。鏡餅は、お正月に訪れる歳神様が宿る依り代となるお供えもの。昔も今も、鏡餅がなければ新しい年の神様は訪れないという、特に大切な存在だったのです。ちなみに、丸いのは神様の御霊を象徴しているから、大小を重ねるのは陰と陽を重ねて福や徳が重なるのを祈るため、などその由来や飾り方の意味にはさまざまな説があります。

 さて。ここで紹介するのは、お雑煮やお汁粉には少し飽きたかな、という時にピッタリな、お餅を使った1品。すき焼きといっても牛肉は使わないので、年末年始で散財してしまったという場合も安心。牛肉がなくても、濃厚なたれとお餅で食べごたえは十分です。ねぎは、できれば九条ねぎをたっぷりと。ねぎにサッと火が通ったくらいで煮汁とからめながらお餅と一緒にいただくと、九条ねぎの鮮やかな緑、香りと食感が存分に楽しめます。日本酒やワインのお供にもおすすめですよ。

作り方

【材料】(2~3人分)

・切り餅 3~4コ

・九条ねぎ(または青ねぎ) 3~4本

A

・しょうが(皮付き薄切り) 1かけ分

・昆布だし 250ml

・みりん 大さじ2

・しょうゆ 大さじ11/2

・酒 大さじ1

・砂糖  小さじ2

白ごま 少々

❶ ねぎは斜め薄切りにする。

❷ 餅は沸騰した湯に入れ、3分間ほどゆでてからざるにとる。

❸ 鍋にAを入れて中火にかけ、ひと煮立ちさせる。ねぎ、餅を加えてサッと煮る。ごまをふる。

ここがポイント!

餅を柔らかくゆでてから煮るのが、ポイント。煮汁の味がしみ込みやすくなるので、煮汁が焦げつく前においしくいだたくことができます。

おかき揚げ

 もう一品は、切って干したお餅を油でカラリと揚げた、おかき揚げです。このおかき揚げ、1月中旬過ぎの今の時期につくるのが、とてもおすすめなんです。その最大の理由が、乾燥した空気。おかき揚げは油で揚げる際に破裂しないように、お餅をよく乾燥させることが最大のポイントなのですが、この時期は空気が乾いて冷たいので、かびる前に早く確実に乾燥するんです。そして、もう一つの理由が、鏡餅。鏡餅は松の内が終わって神様がお帰りになったら、鏡開きをしてありがたくおいしくいただきます。大切なのは、神様の依り代だったのですから、残らず食べること。お雑煮やお汁粉に使ってもいいのですが、堅くなった鏡餅はおかき揚げにおあつらえ向き。ここでは、切り餅を切って干すレシピを紹介していますが、ひびが入っているくらいによく乾燥している鏡餅なら、干さずに小さく割ってそのまま揚げられます。ちなみに本来は刃物で切るのではなく、木槌などで割って食べるのが縁起がよいとされています。

 揚げた後の味つけは、カレー塩とさんしょう塩を紹介しましたが、こしょう塩でも。揚げ油も、米油やオリーブ油などお好みで。もち米の風味が豊かで香ばしく、手が止まらなくなるおいしさです。

作り方

【材料】(作りやすい分量)

・切り餅 2コ

A

・カレー粉 小さじ1/3

・塩 小さじ1/3

B

・粉ざんしょう 小さじ1/3

・塩 小さじ1/3

揚げ油 適量

❶ 餅は7~8mm角に切り、ざるにくっついたり重なったりしないように広げる。全体にひびが入るまで2~3日間天日で干して乾燥させる。

❷ 揚げ油を180℃に中火で熱して❶を入れる。時々混ぜながら、軽くふくらんできつね色になるまで揚げ、油をきる。

❸ AとBをそれぞれ混ぜ合わせる。揚げた餅の半量にそれぞれまぶす。

ここがポイント!

干す場所は、風通しがよく、ほこりをかぶらないところがベスト。餅を干す日数は目安ですが、しっかりと乾燥させないと揚げるときに餅が破裂することも。表面がひび割れて固くなるまで乾燥させましょう。

 

編集/遠藤綾子 写真/名取和久

 

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