吒枳尼眞天とは

ワタナベマキの
心と体に届く 神さま料理

料理・ワタナベマキ

ふきのとうとたらの芽の天ぷら

 もうだいぶ桜のつぼみが膨らんでいます。また春が巡ってきました。『心と体に届く 神さま料理』の最終回・第十二回は、山菜のなかで春一番に登場するふきのとうを使った料理を紹介します。

 雪解けの頃、地中からポツポツと顔を出すふきのとう。昔も今もその姿に待ち望んでいた春の訪れを感じる方は多いのではないでしょうか。ふきのとうは、シュッとのっぽなふきの花茎(かけい)です。数少ない日本原産の山菜で、全国に広く自生していますが、昨今は栽培されたものも出回っています。私は早春のこの季節になると、「待ってました!」とふきのとうで天ぷらをつくります。ふきのとうの魅力といえば、姿かたちの愛らしさと、その愛らしさに反する苦み。でも、この苦みが春の目覚めを誘ってくれる気がするんです。

 天ぷらと同様によくつくるのが、常備菜にもなるふきみそ(ふきのとうみそ)。ただ、スーパーマーケットの店頭に出ているふきのとうではアクが回って苦みが強いので、おいしくできません。そこで、道の駅や産直野菜の販売所に出かけていって購入し、急いで帰ってきてつくっています。そういえば、昔、母が毎年春になると、ふきのとうのおひたしや白あえをつくってくれましたが、幼い頃は苦みが苦手だったのか、格別に好きというわけではありませんでした。でも、大人になってからとても好きになって、ごくごく新鮮なふきのとうが手に入った時だけつくります。私にとって、これも大切で懐かしい春の味です。

 さて、今回の天ぷらのポイントは、姿かたちを生かした下ごしらえ。そして、高温の油で揚げること。淡い緑色を生かすなら低温が向いている気もしますが、高温で揚げることでカリッとしますし、アクが出てくる前に短時間で調理するため、下ごしらえでアク抜きする必要がなくなるんです。今日は同じく山菜のたらの芽と一緒に揚げました。シンプルに塩で、春ならではの風味を存分に楽しんでください。

 

【作り方】(作りやすい分量)

・ふきのとう 4コ

・たらの芽 4コ

・小麦粉 大さじ4

・塩 少々

・油 適量

❶ ふきのとうはサッと洗って水けを拭く。根元の黒ずんだ部分を切り取り、茶色くなっている外葉があれば外す。なかの花蕾が見えるように、葉を広げる。たらの芽はサッと洗い、ペーパータオルで軽く拭いて汚れなどを除き、根元の茶色い皮は外し、堅い部分を切り落とす。

❷ ❶にはけで小麦粉大さじ1をまんべんなくまぶす。

❸ 残りの小麦粉をボウルに入れ、冷水大さじ3を加えてさっくりと混ぜる。

❹ 鍋に油を入れて中火にかけ、200℃になったら、ふきのとう、たらの芽を❸にくぐらせ、2分間ほどうっすらと色づくまで揚げて取り出す。塩を添える。

ここがポイント!  ①

しっかりと葉が閉じているものは、なかの花蕾が見えるように開いてから衣をつけましょう。小麦粉をはけですみずみまでまぶすのも大切。衣がよくついて、美しく揚がります。

ここがポイント!②

たらの芽の根元の茶色い部分は堅く口当たりも悪いので、削ぐように切り落としましょう。

 

ふきのとうのコンフィ

 もう一品は、ふきのとうのコンフィです。和の山菜をオリーブ油などでコトコトと煮るのですが、これがとてもおいしいんです。ふきのとうの料理といえば、先に登場した天ぷらがおなじみですが、ふきのとうと油脂は相性が抜群。油脂でマスキングされるのか、苦みが程よくマイルドになるんです。具材のふきのとうだけでなく、煮たオイルにふきのとうやハーブの風味がうつって、これがまたおいしい。ぜひ、カリッと焼いたバゲットなどを添えてオイルも召し上がってください。このコンフィは、パスタに使うのもおすすめ。また、せいろでホックリと蒸した新じゃがいもにからめながらいただくのも格別です。

 そういえば、ふきのとうには雌花と雄花があることをご存じですか? 小花が細長くて白っぽいのが雌花、小花が円形で黄色みを帯びているのが雄花で、苦みは雄花のほうが強いともいわれています。ふきのとうを料理するとき、観察してみてくださいね。

 

【作り方】(作りやすい分量)

・ふきのとう 8~10コ

A

・ローリエ 1枚

・にんにく(つぶす) 1かけ分

・白ワイン カップ1/2

・塩 小さじ1

・ローズマリー 2本

・オリーブ油 約カップ3/4

・黒こしょう(粗びき) 少々

❶ ふきのとうはサッと洗って水けを拭く。根元の黒ずんだ部分を切り取り、茶色くなっている外葉があれば外す。なかの花蕾が見えるように、葉を広げる。

❷ 鍋に湯を中火で沸かして塩少々(分量外)を入れてサッと混ぜ、ふきのとうを加える。煮立ったら、3分間ゆでて冷水にとり、15分間さらす。

❸ 小さめの鍋にAを入れてサッと混ぜ、ふきのとうの水けをしっかりと拭いて加える。ローズマリーをのせ、オリーブ油を注いで中火にかける。

❹ 煮立ったら弱火にし、ふたをして8分間煮る。粗熱がとれたら器に盛り、黒こしょうをふる。

*清潔な保存容器に入れ、冷蔵庫で4~5日間保存できる。

ここがポイント!

 

オリーブ油の量は目安です。鍋にふきのとうが重ならないように並べ入れ、ふきのとうがギリギリ浸かるくらいまで注ぎましょう。

編集/遠藤綾子 写真/名取和久

 

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