ワタナベマキの
心と体に届く 神さま料理
心と体に届く 神さま料理
八月 真夏の白玉
小豆白玉
暑い暑い昼下がり、ひんやりとした甘いものを食べると、お腹からクールダウンできてホッとします。『心と体に届く 神さま料理』の第五回は涼を呼ぶ白玉(白玉だんご)をご紹介します。
幼い頃、夏休みになると母がおやつによく白玉を作ってくれました。そのせいか、今でも白玉が大好き。暑い季節になると、ふと白玉が食べたくなって作ります。よく冷やしてからフルーツと合わせたり、かき氷に添えたり、自家製梅シロップと合わせたり……。姿かたちが愛らしく、つるんとした食感の白玉は夏の楽しみのひとつです。
江戸時代の江戸っ子も私たちと同じように、白玉を夏の楽しみにしていたようです。江戸時代後期の都市風俗を記した書物には夏に冷水に白玉を入れて売る冷水売りが登場しますし、歌川国芳らの浮世絵にも白玉が描かれています。描かれた白玉には、紅や黄色の斑が入ったものもあって、まるで金魚のような愛らしさです。白玉をつくるもととなる白玉粉の発祥については諸説あるようですが、江戸時代には庶民にも手の届く食品になっていたんですね。
ちなみに、白玉粉は上新粉、だんご粉、もち粉などと同じく米粉の一種。原料のもち米を水に浸してから挽き、沈殿したものの水分を抜いてから乾燥させて作られます。かつては大寒前後の厳寒期に作られていたため、寒ざらし、寒ざらし粉と呼ばれることも。白玉粉で作ったおだんごはつるんとなめらかな食感と、もち米由来の粘りが特徴。うるち米(ふだん食べているお米です)が原料の上新粉、うるち米ともち米が原料のだんご粉で作ったおだんごに比べて冷たい状態でも堅くなりにくいので、夏の冷たい甘味にはピッタリなのです。
今回は、白玉ならではのおいしさを楽しむため、シンプルにゆで小豆と合わせました。特に暑い日はかき氷にのせ、好みのシロップをかけてどうぞ。ちなみに、ゆでた白玉は時間が経つと堅くなってしまいます。おすすめは冷凍保存。ゆでて粗熱を取った白玉の水けをきり、小分けしてラップで包んで保存袋へ。1か月ほど冷凍保存できます。食べる際は使う分だけポリ袋などに入れ、流水につけて戻せばゆでたての柔らかさが復活します。少し多めに作って冷凍しておけば、夏の間、ゆで小豆はもちろん、あんみつやフルーツポンチに加えたり、アイスクリームと合わせたり、と大活躍。白玉粉さえあれば意外に簡単につくれる白玉を、ぜひお試しください。
作り方
【材料】(3~4人分)
・白玉粉 100g
・水 100~120ml
・ゆで小豆(市販でもよい/作る場合は下記参照) 適量
【準備するもの】
氷水(ボウルに作っておく)。
◆ゆで小豆の材料と作り方(作りやすい分量*)
❶ 小豆(乾)100gはサッと洗って鍋に入れ、かぶるくらいの水を加えて中火にかける。煮立ったら5分間ほど煮て、ゆでこぼす。再度かぶるくらいの水を加えて中火にかける。ひと煮立ちさせてから5分間ゆでてざるに上げる。
❷ 鍋に入れ、かぶるくらいの水、甜菜糖50gを加えて中火にかける。煮立ったら弱めの中火にし、ふたをして時々混ぜながら40分間煮る。
❸ さらに甜菜糖50gを加え、小豆が液面からしっかり出ていたら、小豆が少し出るくらいまで水を加えて弱めの中火で小豆が柔らかくなるまで時々混ぜながら40分間煮る。最後に塩小さじ1/4を加えて混ぜる。
*残りは密封容器に入れ、冷蔵庫で約5日間、または冷凍庫で約1か月間保存可能。
生地を作る
❶ 白玉粉をボウルに入れ、分量の水100mlを加えて、手でよく混ぜる。生地がまとまってきたら、耳たぶの堅さになるまで手のひらで押さえるようにしてこね続ける。堅い場合は、様子を見ながら分量の水の残りを少量ずつ加えてこねる。
❷ ラップをかけ、30分間おいてなじませる。
成形してゆでる
❸ 直径1.5~2cmに丸め、指で中央を押さえてくぼませ、円形にする。
❹ 鍋にたっぷりの湯を沸かして中火にし、❸を入れる。浮いてきたら、3分間ほどゆで、氷水にとって冷ます。仕上げる
❺ 器に水けをきった❹を盛り、ゆで小豆をのせる。
ここがポイント!
はじめは指先で、粉をつぶしながら水と混ぜていきます。粉っぽい部分やねちゃっとした部分がなくなってきたら、手のひらでこねましょう。こね続けていくうちに粘土のようにまとまっていき、手にもボウルにもつかなくなってきます。表面が乾燥すると成形しにくくなるので、すぐにゆでない場合はラップで覆います。
ここがポイント!
大き過ぎると火の通りが悪くなります。小さめにして、真ん中をくぼませると、火が早く、ムラなく通りますよ。白玉同士や鍋にくっつかないよう、大きめの鍋に湯をたっぷりと沸かすのも大切なポイントです。
すいか白玉
もう一品は、水ではなく、豆腐の水分を利用して作る変わり白玉。意外に思われるかもしれませんが、豆腐が淡泊なのでいろいろなものと合わせやすく、水で作った白玉より堅くなりにくいのもうれしいところです。ちなみに、白玉粉に加える水はハーブティーやほうじ茶などに換えると、また異なる風味が楽しめます。バリエーションが簡単に楽しめるのも白玉の魅力ですね。
そういえば、白玉は台湾や香港など中華圏でも親しまれています。私は台湾のかき氷屋さんの、白玉のほかに緑豆や小豆、白きくらげ、マンゴーなどたくさんのせて食べるかき氷が大好きで、台湾を訪れるときは必ず食べています。それ以外にも肉あんを包んだ白玉を入れたスープなども気に入っていて、時々台湾を思い出しながら作ります。甘いものにもしょっぱいものにもなり、冷たいものにも温かいものにも合う。変幻自在の白玉、すごいですね。
作り方
【材料】(2~3人分)
・すいか 200g
・白玉粉 100g
・絹ごし豆腐 100g
・塩 少々
A
・水 200ml
・甜菜糖 50g
・レモン汁 大さじ1
【準備するもの】
氷水(ボウルに作っておく)。
くりぬき器(直径3cm/あれば/なければ、果肉を一口大に切る)。
氷。
❶ Aをボウルに混ぜ合わせ、冷やしておく。
❷ 白玉粉をボウルに入れ、絹ごし豆腐、塩を加えて、手でよく混ぜる。生地がまとまってきたら、手のひらで押さえるようにしてこね、耳たぶくらいの柔らかさにする。耳たぶより堅い場合は、様子を見ながら水を少量ずつ加えてこねる。
❸ ラップをかけ、30分間おいてなじませる。
❹ 直径1cmほどの小さな球形に1コずつ丸める。
❺ 鍋にたっぷりの湯を沸かし、❹を入れる。浮いてきたら、中火で2分間ほどゆで、氷水にとって冷ます。
❻ すいかの果肉をくりぬき器で抜く。
❼ 器に水けをきった❺、❻を盛り、❶を注ぎ、氷をのせる。
ここがポイント!
豆腐の水分を使うので、豆腐の水きりは不要。木綿豆腐でも同じように作れます。また、白玉粉に加える水分はお茶などのほか、ココナッツミルクや甘酒、豆乳、ヨーグルトなどでも作れますよ。その場合も白玉粉と同量くらいが分量の目安です。
編集/遠藤綾子 写真/名取和久