吒枳尼眞天とは

二十四節気
〜季節を感じるこの一句

文・浦川聡子

曼殊沙華まんじゅしゃげ

どれも腹出し

秩父の子

金子兜太

 九月二十二日は秋分です。太陽は真東から昇って真西に沈み、昼と夜の時間がほぼ等しくなります。「秋の日は釣瓶つるべ落とし」と言われているように、秋の日は一気に暮れていきます。ちょうどこの頃、曼殊沙華はまるで約束したかのように咲き始めます。
掲出句、作者の金子兜太は大正8年生まれ。戦後、社会性俳句、前衛俳句の旗手として活躍し、社会を鋭く抉る作品を作る一方、こうした人間味あふれる作品も数多くのこしています。秩父は兜太のふるさと。飾ることなくお腹を出して駆けている土地の子どもたちに、あたたかな眼差しを注いでいるのです。

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