吒枳尼眞天とは

二十四節気
〜季節を感じるこの一句

文・浦川聡子

万緑ばんりょく
中や吾子あこの歯
むる

中村なかむらくさ

五月二十日は小満です。万物が次第に成長して天地に満ちはじめる頃の意。
掲出句の「万緑」は、見渡すかぎりに生い茂った草木の緑。王安石おうあんせきの漢詩に「ばんりょくそうちゅうこう一点いってん」の詩句があり、中村草田男の作例により、季語として一般化されました。このように、俳句には、優れた例句によって、季語として定着する場合があるのです。

深まる一面の緑の中でわが子に生えた初めての真っ白な歯。輝くような白い歯は、未来への希望のようでもあります。日々成長する木々の緑と歯の白さの対比が際立つ、生命賛歌のような一句です。

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